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吉祥紋様

吉祥文様とは縁起の良いとされる祝意を表す伝統的な文様です。

繁栄や長寿延命(鶴亀)夫婦和合(鴛鴦おしどり)、また寿字文、福字文、禧字(きじ)文もそのひとつで禧はよろこび、幸いという意味です。

この度は創立五〇周年を迎える服飾文化研究会の喜びの現われとして、年明けより吉祥文様を展示いたしました。

会報八〇号の『調査研究室より発信』では  松竹梅、鶴亀、鳳凰、束ね熨斗(のし)、宝尽くし、宝船、薬玉、橘、四君子、扇、瑞雲、麻の葉を掲載いたしました。

その他にも唐草、鱗、青海波なども吉祥文様です。

松立涌に鶴縮緬 長着

松立涌に鶴 縮緬  長着

水蒸気が立ち昇るさまを曲線のふくらみを利用して柔らかな連続模様を文様化した立涌は「たちわく」「たちわき」ともいいます。有職文様でふくらみの中に雲、菊、藤などを入れ、松を配したものは皇族妃の装束に用いられるそうです。

春鶯(しゅんおう)と白梅(しらうめ)

春鶯(しゅんおう)と白梅(しらうめ) モスリン  長襦袢

秋から冬には笹鳴き、暖かな春になるとホーホケキョと鳴き方の違う鶯(うぐいす)。
早春に他の花に先駆けて咲く梅はとても縁起が良いとされ、襲式目(かさねしきもく)【襲の色目(いろめ)】では表が白で裏は紅のものが白梅と呼ばれています。

晴着 縮緬 長着

晴着 縮緬  長着

松竹梅に菊、地紙に宝尽くし、そして鶴「よいきざし、めでたいしるし」とされる吉祥紋様を尊い色の紫紺地に重ねた縮緬です。可愛い晴着になりました。

花の丸 縮緬 長襦袢

花の丸 縮緬  長襦袢

鹿と福の篆書(てんしょ)文字に松竹梅の花の丸。鹿は春日大社や厳島神社では神鹿(しんろく)として神の遣い、中華街などでよく見られる福の文字を逆さまにしたのは「倒福(ダオフー)」といい「福が来る」を表します。

鳳凰 錦紗縮緬 女児祝着

鳳凰 錦紗縮緬  女児祝着

中国の伝説で名君が出て天下泰平の時に現われる想像上の瑞兆。桐に棲み珍しい竹の実を食し冷泉水を飲むと云われ飛鳥時代から法隆寺、正倉院の宝物にある吉祥文です。

光琳梅 二越縮緬 羽織

光琳梅 二越縮緬  羽織

江戸中期の画家、尾形光琳の印象的な画風を様式化したものを光琳文様と言います。
簡略化しながらも優しい曲線で描かれた文様は市中で爆発的な人気となりました。
柔らかい色使いと丸い形は愛らしく春の兆しが感じられます。

扇 縮緬 丸帯

扇 縮緬  丸帯

扇を広げると末広がりになるところから、開運、子孫繁栄の願いと共に縁起のよい文様として親しまれてきました。扇文には檜扇、扇面文、扇子文、地紙文などがあります。

霊芝雲に破れ裏鏡 縮緬 長襦袢

霊芝雲に破れ裏鏡 縮緬  長襦袢

霊芝雲は中国の霊芝という茸に似ていることからついた名称で、縁起のいい瑞雲です。正倉院にある工芸品にも霊芝雲を表現したものが多数見られます。

薬玉 紋縮緬 長着

薬玉 紋縮緬  長着

薬玉は五月五日の端午の節句に魔除けのために飾った中国の風習をまねたものです。種々の薬や香料を錦の袋に入れ菖蒲、蓬などの造花を結んで五色の糸を長く垂らし縁起よく久寿玉の字を当てることもあります。

宝船 二越縮緬 長着

宝船 二越縮緬  長着

帆掛船に七福神や米俵などが賑やかに描かれる事が多い宝船とは趣が異なり、強い風や波を受けながらも力強く進むこの船には七宝や宝珠等の宝物が積まれています。立身出世を願う心が託された文様です。

宝尽くし 縮緬 羽裏

宝尽くし 縮緬  羽裏

金嚢・巾着、宝巻・巻軸、七宝輪違いなど宝尽くし文様は縁起のよい宝物を集めた吉祥文様です。元々は中国の「八宝」「雑八宝」に由来し、日本独自のモチーフが集められました。

一富士二鷹三茄子 平絹 羽裏

一富士二鷹三茄子 平絹  羽裏

初夢に見ると縁起が良いとされるもので、富士は不老長寿を鷹は出世栄達を茄子は子孫繁栄の意味があると言われています。あらゆることを縁起かつぎと結びつけ、運気を良くするよう努め、おめでたいことを喜び、楽しもうとする人々の知恵と遊び心のあらわれと思われます。

鶴群(たづむら) 平絹 羽裏

鶴群(たづむら) 平絹  羽裏

鶴は一度夫婦になると一生添い遂げ、子供が旅立つまで仲良く寄り添うと言われています。文様一杯に親鶴小鶴が溢れる群れの姿は明るく賑やかで可愛らしく、これも又、めでたい姿です。

初夢 縮緬 長襦袢

初夢 縮緬  長襦袢

色紙に縁起の良い初夢とされる一富士、二鷹、三茄子。富士は「無事」、鷹は「高い」、茄子は「成す」。それぞれの言葉にかけています。今年も良い年なりますように…。

松川菱に薬玉 錦紗縮緬 長着

松皮菱に薬玉 錦紗縮緬  長着

松皮菱は菱形の上下に小さい菱をつけた子持ち菱です。二つの薬玉には種々の香料を玉にして錦の袋に入れ草花を添え、五月五日の端午の節句に掛けることで邪気を払い、長寿を保つことができるという古代中国の風習に由来しています。

槍梅(やりうめ) 紋錦紗 長着

槍梅(やりうめ) 紋錦紗  長着

花と蕾のついた梅の枝が、槍を立てたようにまっすぐに並んでいる姿を表した文様です。
寒さに耐え、春一番に咲く梅。冴え冴えとした瑠璃色の中から芳しい梅の花の香が漂ってきます。

麻の葉に宝尽くし 二越縮緬  長着

麻の葉に宝尽くし 二越縮緬  長着

深い濃き紫の上にくっきりと大胆な麻の葉。その上に縁起の良い宝物金嚢、分銅、宝巻、隠れ笠を優雅な色調で描いた模様です。宝尽くしは室町時代に伝わり、日本風にアレンジされて宝尽くし文様となりました。

檜扇と鼓 縮緬 長着

檜扇と鼓 縮緬  長着

黒地に黄色の麻の葉文様、檜扇は末広がりの形から発展・繁栄を願う縁起の良い吉祥文様です。
鼓に花が描かれ華やかな「花鼓文」。健やかな成長と幸福を願う親の愛情が表われているようです。

束ね熨斗に鶴 縮緬 子供きもの

束ね熨斗に鶴 縮緬  子供きもの

熨斗は鮑の肉を薄く剝いて引き伸ばし、祝儀の進物や引き出物に添えたのが始まりです。
それを細長い帯状にし数本を中央で束ねた文様として表されたのが束ね熨斗です。
江戸時代から染織品の文様に使われているようになりました。

宝船と福寿文 平絹 羽裏

宝船と福寿文 平絹  羽裏

福寿文はとてもおめでたい文字文様の一つで、米俵や宝物を乗せた宝船をともに描くことでより一層縁起物の文様になっています。
帆を上げ「順風満帆」に船が進むことは成功や繁栄を意味し、幸運な未来が開けていくことの象徴とされています。

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