十二支(じゅうにし)
十二支は古代中国に始まり陰陽五行説と結びついた暦法に由来します。これは万物には陰と陽の二元の変化から成り、木・火・土・金・水の五元素によって変化するという思想です。
十二支の文字と動物の結びつきは明確ではありませんが中国の戦国時代(BC400年頃)の青銅器に虎・兎・龍などが遺され、この頃に結びついたのではとの説があります。
日本では年や日を干支(えと)で示し、年頭の挨拶状に馴染みがあります。今年の干支は甲辰(きのえたつ)の龍年です。令和七年は乙巳(きのとみ)の蛇年。生命力、金運、財運に恵まれる良い年になりますように。
子【鼠】 ね・ねずみ 子孫繁栄
丑【牛】 うし 転換・堅実
寅【虎】 とら 始まり・才知
卯【兎】 う・うさぎ 跳躍・家内安全
辰【龍】 たつ 生の活動・正義
巳【蛇】 み・へび 生命力・金運・財運
午【馬】 うま 豊作・健康
未【羊】 ひつじ 安泰
申【猿】 さる 日照りや火事を防ぐ
酉【鶏】 とり 収穫・親切
戌【犬】 いぬ 安産・勤勉
亥【猪】 いのしし 無病息災
十二支の文字は子・丑・寅…で、後世になり動物の鼠・牛・虎…にあてはめられました。
◎干支とは甲乙丙…からなる十干(じっかん)と子丑寅…の十二支とを組み合わせた十干十二支(じっかんじゅうにし)を略した言葉です。
四季の文様展示に初めて十二支を取り上げました。
文様の中のご自分の干支を見つけてください。
辰 平絹 羽裏
今年は辰年、龍の年です。龍は十二支の中で唯一想像上の動物で、中国では権力の象徴であり、縁起の良い生き物とされ、日本では水の神とされています。
羽裏に染められた陶画の龍。鋭い四本爪に似合わぬひょうきんな顔が愛らしいです。
打ち出の小槌にねずみ 二越縮緬 長襦袢
背景の蜀江文の中には宝尽くし文。その上に大きな打ち出の小槌を墨絵風に大胆に描いてその中に働くねずみ達をコミカルに表現。ねずみは大黒天に仕える動物です。年始めには鯛や宝尽くしとねずみ文様はおめでたいものです。
鶏(酉) 錦紗縮緬 長襦袢
天の岩戸神話にも登場する鶏は、時を告げ卵を産み育てる身近な鳥でもあります。
落穂をついばむ鶏の目や羽毛は緻密に描かれ、尾羽(おばね)や鶏冠(とさか)にも濃淡がつけられていて、写実的な表現が際立っています。
雪輪に兎 二越縮緬 長襦袢
月で餅つきをしたり〝待ちぼうけ〟の歌や「因幡の白兎」などで兎は古くから親しまれてきました。穏やかで温厚でピョンと跳ねるのが得意。厄除けの赤色、吉祥文様の雪輪と青海波の中で次はどんな飛躍をするのでしょうか。
菖蒲革と干支 平絹 羽裏
横段に菖蒲革と三角形の中にさまざまな動物、午・戌・未・龍・寅・子などが描かれています。菖蒲は尚武(しょうぶ 武勇を尊ぶ精神)に通ずるため武家に好まれ馬具や武具に用いられました。
カチカチ山の兎 二越縮緬 長着(子供)
兎の意匠には、月兎、波兎、花兎など風情のあるものが多くあり、桃山時代から江戸時代にかけて盛んに描かれるようになりました。
現代ではまんまと泥船に狸を乗せた兎の姿も絵柄として登場しています。
亥(いのしし) 二越縮緬 長着
亥は十二支の中で子(ね)
から始まり最後の干支です。亥という字は、力(エネルギー)を蓄えて次の世代へと向かう準備をする意味が込められています。猪突猛進一直線に突き進む力強さに無病息災の象徴とされています。
申(猿) 羽二重 羽裏
申(猿)は「去る」に通ずることから、良くないことが去って行くという意味があります。
また猿は好奇心旺盛、活動的で器用なため、同時進行で物事をこなすことができると言われています。
山河に龍虎 モスリン 長襦袢
雲をよぶ龍と風を起こす虎と対峙させることは、風雲に遭う覇者の姿として、室町時代以降、戦国武将や禅僧に好まれました。
迫力ある龍虎を長襦袢で纏うことで勇気が湧いてきそうですね。
午 (うま) 平絹 長襦袢
午は十二支の真ん中で、漢字の「午」は分けるを意味し、一日を分ける「正午」など私達の生活に関わりの深い動物です。
襦袢地に染められた馬は、たて髪をなびかせ長い尻尾を大きく振り颯爽と走る様は、天をも駆ける勢いです。
羊(未) モスリン 子供長着
群れで生活し性格がおとなしい羊(未)は「平和の象徴」とされています。十二支の仲間の馬(午)や兎(卯)も可愛らしく染められた※モスリン友禅です。
※モスリン友禅―化学染料と糊を合わせた写し糊を色毎に別の型紙で多色の木版画のように刷った型友禅。明治十三年頃堀川新三郎により創始。
羊 平絹 羽裏
羊は推古天皇の時代に百済などから献上物として渡来したと日本書紀にも記述がありますが日本には定着しませんでした。明治時代になって又、日本に入ってきます。
日本では馴染みの薄い羊柄の着物は少なく、この文様は十二支の動物が全て入った羽裏です。
辰(たつ 龍) 平絹 羽裏
十二支の中で唯一架空の動物、古代中国では宮廷文とされたが、日本では生活用具などにも用いられた。五爪は皇帝専用とされている。
龍が持つ宝珠は「如意宝珠」と呼ばれ、宝珠を持ち天にかけ上がるような図は吉祥文といわれる。
「子」(ねずみ) 二越縮緬 長襦袢
紗綾形の文様と宝尽くしのモチーフ(宝珠、分銅、七宝輪違い、宝巻、丁字など)があります。十二支の筆頭〝ねずみ〟が餅つきをしたり、打出の小槌を担いでいたり、新しい年を迎える準備に忙しい「子」の様子が物語のように伝わってきます。
雪中の虎 平絹 羽裏
日本には野生の虎は居ませんが風水などで白虎(西を守る神獣)として親しまれてきました。また十二支では寅は東北東の午前三~五時を指します
背景の〝撒(ま)き糊散(のりち)らし〟がはらはらと舞う雪のようです。
酉(とり・鶏) 錦紗縮緬 長襦袢
鶏は古代から日本人に馴染みの深い鳥で、瑞鳥(めでたいことの起こる前兆とされる鳥)の一つとしても知られています。日本神話では「神の使い」とも言われており、鳴き声で朝を告げる「時告げ鳥」としても縁起が良いとされています。
竹に犬 二越縮緬 長襦袢
竹藪で犬達が、じゃれ合っていたり覗いたりしています。抑えた色遣いですがとても愛らしい図柄です。
竹の下に犬を描いた図柄は古来「一笑図」と呼ばれ、子孫繁栄の願いが、込められています。
丑(うし)蛮絵風 平絹 羽裏
丑の字は〝結ぶ〟や〝つかむ〟の意味からきています。先を急がず着実に物事を進める勤勉や誠実さを象徴しています。
蛮絵は有職文様のひとつですが和様化することなく今なお異国的な趣が色濃く残る文様です。