帯地 其の二
この春からの帯地の展示を再び同テーマで掛け替え、ご覧いただくことと致しました。
この度は、初めての試みとして帯地だけでなく調査研究室所蔵の季節感ある帯そのものを額入れして展示しています。
また、七月発行の会報誌服飾文化79号の〝調査研究室だより〟に、織りの帯、染めの帯を取り上げ、織・染の種類を解りやすく解説しています。併せて、お楽しみ下さいますように。
朝の容花(かおばな) 斜子(ななこ)織(刺繍) 単帯
平安時代に呼称が確認されるまでは「朝に咲く美しい花」という意味の容花と呼ばれていた朝顔。織は変化平織の一つで複数の糸を引き揃えて織る斜子織です(籠の様に見える事からバスケット織とも言われている)芝草すかしで、上に刺繍した帯。
葡萄(ぶどう) 壁絽 仕立て名古屋帯
葡萄は沢山の実をつけることから豊穣の象徴とされ、さらには子孫繁栄に繋がるということで、古来から吉祥文様として愛されてきました。この帯の壁絽というのは、強く撚りをかけた糸と無撚りの細い糸で上撚りをかけた糸を緯(よこ)糸に使った絽です。
芭蕉 紗織 帯地
織りの帯地に毛足のある天鵞絨(ベルベット)を切嵌(きりばめ)にして芭蕉の葉の厚みを表現しています。銀糸で刺繍された花芽が抑えられた色調の中でポイントとなり涼やかさをより際立たせています。
狩猟文 粗紗(刺繍) かがり名古屋帯
異国の樹木や草花などを背景に騎乗の人物が獅子や鹿、羊、猪、兎などの動物を弓で射る様子を意匠化した文様です。ササン朝ペルシャ(イラン王朝)時代の※獅子狩(ししかり)文様がアレンジされて日本に伝わりました。
※円形を連ねた連珠文の縁の中に四頭の獅子に弓を引き絞る四騎の狩猟者を配した文様。
貝尽くしに海老 絽 仕立て名古屋帯
形や色が美しい栄螺(さざえ)・蛤(はまぐり)・帆立などの貝を数種類組み合わせた貝尽くし文様です。中心に織られている海老は、腰が曲がっていても跳ねる力が強く海の翁と言われ、長寿の象徴とされています。波の音も聞こえてくる様です。
蛇籠に千鳥 段絽 仕立て名古屋帯
波間に千鳥と蛇籠が匹田文様で染められています。蛇籠は水の勢いを抑える為に竹籠の中に石を詰めて沈めたもので、その形が大蛇に見える事からの呼称です。愛らしい千鳥を引きたてて水辺の風景に趣を添えています。
薊(あざみ) 紗織 帯地
薊は桃山時代までは文様としては取り入れられず、江戸時代以降に用いられる様になったとされています。日本では百種類以上あるとされ、葉に深い切れ込みと、鋭い棘を持ち頭状の花が特徴の馴染みのある植物です。この帯はどの薊を模したのでしょうか。
春蘭 紗織 仕立て名古屋帯
古来中国では、蘭・梅・菊・竹と共に美しく高貴な姿を君子にたとえ「四君子」として愛でられてきました。これが日本へ伝わり吉祥文様として現代にも多く用いられています。花言葉は「控えめな美」です。