初春を寿ぐ
去年(こぞ)、今年、除夜の鐘の最後のひとつを聞き、新しい年を迎えました。
本年の干支(えと)は卯(う )(兎)です。兎は元気に跳ねることから飛躍・向上の年といえます。
文様として兎が盛んに用いられるようになったのは桃山時代、江戸時代の頃からです。桃山時代の貿易商の角倉了以(すみのくらりょうい)が明国から持ち帰った金襴の名物裂に描かれた草花と兎は角倉金襴(すみのくらきんらん)、花兎金襴と呼ばれ知られています。兎は姿が可愛らしく月と兎の伝説にも多く登場します。両耳がぴんと立った形から門が開くとされ、多くの情報を集め、正月兎は縁起が良く喜ばれます。
この度は、お正月に相応しい宝尽し文などの吉祥文様を中心に選び展示いたしました。
松立涌に鶴 二越縮緬 長着
立涌は平安時代から続く有職文様の一つで吉祥文様です。空色、紅色、二藍(ふたあい)、紅梅色と鮮やかに染め分け、松を配した松立涌です。そして今、鶴が飛び立ちます。新しい年の希望にむけて・・・。
めでたさいろいろ 縮緬 長着
松竹梅に菊。地紙に宝尽し。羽ばたく鶴。次々と重ねられる吉祥文様を上品に可愛らしく浮かびあがらせているのは、地色の紫紺。色もまた、「紫なるものはめでたくこそあれ。」(清少納言)です。
宝船と御所人形 平絹 羽裏
つややかに磨き上げられた白い肌、丸々とした肢体、幼児のすこやかな愛らしさを象徴したような御所人形です。宝尽しの宝船と力強い御所人形とがいかにもめでたく、まさに慶事にふさわしい吉祥文様です。
打出の小槌と米俵 二越縮緬 長襦袢
瑞祥の意味を持つ寿と福の字をさまざまな書体で表した文字文様と、五穀豊穣のシンボル、米俵に打出の小槌も描かれています。
大黒様にお願いして小槌を振っていただきましょう!金色に輝く俵から大判小判がざくざくと出てきそうです。
七福神 二越縮緬 長襦袢
福徳の神として信仰される七福神、恵比寿、大黒天、福禄寿、毘沙門天、布袋、寿老人、弁財天を紋様とした長襦袢を、新年の幸を願って、お正月の晴着の下に纏ったのでしょうか?
出番です 綿 男児長着
「さあ、行くぞ!」月の中から元気よく飛び出して来た兎達。待ちかねた卯年の始まりです。初日の出、鶴の丸等、めでたきものとの取り合わせで、新年を迎える清々しさを感じさせてくれる子供きものの文様です。
折鶴 縮緬 長着
鶴は古くから長寿の象徴で江戸初期にはきものの模様に折鶴が描かれています。千代紙の鶴と小さい鶴がかわいいですね。サッカーw杯日本選手がロッカー室にお礼状と共に添えた折鶴も印象的でした。
雪持ち松 紋錦紗 羽織
雪持ち文は、時に雪をはね返しつつ、雪の下で静かに佇む植物の生命力と、春を待つ心が伝わる文様です。
大雪の年は豊作豊穣の吉兆説があり、松竹梅とも相俟って新年に相応しい柄です。
染め匹田に宝尽し 羽二重 羽裏
色鮮やかな宝尽し。雲取りの中に配する事で、文様にめりはりをつけています。背景の桝形の割付文は、糸でくくって染める匹田絞の図柄を模して染めで描いた“染め匹田”です。
隠れ笠 隠れ蓑 二越縮緬 帯
中央に大胆に描かれた、UFOの様なモチーフは、宝尽しの中の隠れ笠です。左上に配された隠れ蓑と同様、姿を隠し、災いから身を守ることができるという宝物です。
花熨斗 錦紗縮緬 長着
花熨斗は花束を※檀紙で包み水引で飾ったもので、宮中行事から生まれた格調高い文様です。熨斗の源は祝事の贈物に添えた「熨斗鮑(のしあわび)」の事です。それを意匠化したものには「束ね熨斗」「暴れ熨斗」「熨斗目」などの文様があります。※檀紙 ― ちりめん状のしわのある和紙。
お正月 平絹 長着
佳き年が明けました。鶴は古くは神鳥と考え長寿の瑞鳥です。独楽回し、凧揚げ、福笑い、お正月は子どもも晴れ着で祝います。元気に大きく育って欲しい。いつの世も願いは変わりません。
餅花と羽子板 木綿 長着
新春を寿ぐ冬牡丹、羽子板、そして餅玉を木綿地に色も華やかな絵模様に染めた「大正染」です。庶民の友禅に対する憧れから生み出され、子供の祝い着や振袖、婚礼布団などにも描かれました。
百人一首 二越縮緬 長襦袢
百人一首の絵札、字札(取札)を配した文芸文様です。“浅茅生(あさじぶ)の小野の篠原しのぶれど、あまりてなどか人の恋しき”(参議等さんぎのひとし)の下句が見られます。色紙、短冊などは教養として扱われる文様のひとつです。
小槌と巻物 二越縮緬 長着
小槌は打てば望みが叶う伝説の道具で「打つ」から敵を「討つ」にも通じ縁起が良いとされています。巻物の宝巻には有難いお経が書かれ、秘伝を記したものが巻軸です。この二つは筒守(懸守かけもり)として表現されることもあります。
束ね熨斗 錦紗縮緬 長着
熨斗は鮑を薄く長くはいで筋状に引き伸ばし乾かしたもの。儀式の酒肴に用い、のちに祝事の進物や飾りとし熨斗鮑を意匠化したものです。細長く束ねた形を吉祥文として江戸時代より小袖や振袖に描いたものが束ね熨斗文です。
玩 具 二越縮緬 長着
犬張子は子宝、安産、厄除けの縁起物。でんでん太鼓は、魔除けの太鼓の音に加え、表裏の無い素直な子に育つ様に。折鶴に一年の健やかな成長の願いを込めて。今年も良い年になりますように。
一富士 二鷹 三茄子 平絹 羽裏
初夢に見るものの中で縁起の良いとされているものの順。駿河の国で高いものを順に並べた、縁起の良いもの、徳川家康の好きなものを並べたという説もあります。
玩具兎柄 平絹 羽裏
「月には兎が棲む」という伝承や童歌(わらべうた)、昔話でも兎がよく登場するように、古くから兎は身近な動物です。その穏やかな様子から家内安全や跳びはねることからも飛躍を象徴し、縁起が良いとされています。運気を上げ、福を集める年でありますように。
ひなまつり 平絹 子供長着
満開の枝垂れ桜と春の花々、華やかな色使いです。雛飾りの左近の桜右近の橘は、御所に植えられていたのを模したのが始まりです。もとは左近の梅だったのですが、焼失し近くの桜を移植したのが今日に至ったようです、