四季の展示「器物文と割りつけ文様」
扇、矢羽根、籠、楽器など、あらゆる道具類や生活用具などを文様化したものを器物文といいます。形が美しく、古くから、きものなどの文様に用いられ、季節の草花や雲取りや霞文などと合わせて多種多様にアレンジされています。
また、割りつけ文様とは同じ文様を前後左右に連続させ、規則的にくり返し、一定の面積の中に割りつけたものです。
三角形、菱形、方形、多角形、円形などで構成されています。
うろこ三角形を割りつけた鱗文
方形を割りつけた石畳(市松)文
円形を割りつけた七宝文があります。
また、直線で構成された麻の葉文、曲線で構成された網目文や立涌文などがあります。単純な中にも一面に割りつけられたさまは美しく、きものはもちろんのこと、帯、白生地の地紋など、さまざまな和の意匠として使われています。
花七宝に楓 二越縮緬 羽織
円が永遠に続いていく七宝文は、円満、調和、という縁起の良い意味が込められています。その七宝文に紗綾形の楓、摺疋田の楓、白く小さな葉を染めた紅色楓を散りばめることで、一段と深まりゆく秋の気配を感じさせてくれます。
花菱 宝尽し 羽二重 羽裏
菱はその名のもととなった水草、菱が繁茂しやすいところから尚武や商売繁盛の意味が込められた模様です。菱形の中に宝尽し文が描かれていて福徳をよぶ模様です。花菱は有職文様の一つで菱形の中に花びらを四枚いれたものです。
鱗と雨龍 紋錦紗 羽裏
三角形を連続して配した鱗文は能や歌舞伎で女の怨霊を表わす衣裳として使われています。現代ではその文様を身につける事により逆に魔除け厄除けの願いをこめています。帯、長襦袢、帯揚にもみられます。ちなみに雨龍と親龍が描かれた夏帯が調査室にあります。
網代にぶどう小鳥 モスリン 長着
竹を編み垣根等に用いた網代は見えないものから身を守る疫病よけ。葡萄は蔦がからみ実沢山から子孫繁栄、商売繁盛の願い。早くコロナが退散してみんなの願いが実を結びますように。
菊とエ霞 錦紗縮緬 長襦袢
菊は長寿の象徴であるほか、無病息災、邪気払いなど様々な意味を持つのが特徴です。その大輪の菊を大胆に表現し、その上に日本独特の感覚で図案化したエ霞を配置し、菊の美しさやかぐわしい香りをより一層引き立たせています。
丸文に笹と苫舟 二越縮緬 羽織
円の中に苫舟と芦、鼓と蔦、波頭と笹など器物や風景と植物を組み合わせた文様を丸文といいます。白ぬきされた蝶、藤、萩や、大きさの異なる丸文が深緑の地に賑やかさを添えています。
立涌に宝尽し 羽二重 羽裏
立涌は、二本の曲線を用いて、水蒸気が湧き、立ち上っていく様子を表しています。また、隠れ蓑、打出の小槌、丁子などの宝尽しも福徳を呼ぶ吉祥文で、縁起が良く、華やかです。この美しい羽裏を付けた羽織を着たら、さぞかし気持が高揚したことでしょう。