四季の展示「令和の年明け」
「松立てて 空ほのぼのと明くる門」(夏目漱石)
新しい年を迎える準備のひとつに家の戸口や門前に一対の門松(神様の降りる目印となり宿るところ)を立てて、歳神様を迎えます。
初夢は如何でしたか。一月は松が取れると鏡開き、正月に歳神様に備えた鏡餅を食べ神仏に感謝し無病息災を祈る。そして七草、正月七日に七種の若菜を入れた七草粥を食べ万病と邪気を払います。
二月は節分、季節の分かれめ、翌日は立春。今も昔も冬の寒さに耐え迎える「春立つ日」の喜こびは大きいものです。
弥生三月は雛まつり。年中行事はそれぞれに意味があります。新しい年を迎え宝尽くしや春らしい模様裂を展示いたしました。
この度の展示は三月迄ですが、一月末には本会へ雛人形の展示も致します。どうぞお楽しみ下さい。
寿の字に宝尽くし 紋綸子 羽織
華やかな躑躅色地に長命安泰を祈り、めでたきことを祝う寿の文字三つ。福徳を呼ぶ吉祥の宝尽くしがその中の一文字に大きく入っていて目を引きます。今年も良い年になりますように。
枝梅 椿 二越縮緬 長着
椿は日本原産、高貴、聖なる花と評され、茶花として好まれました。梅は中国原産、好文木、春告草といわれ多くの詩歌に詠まれ、二つの花の共通は吉祥模様とされ、早春に咲き薬や化粧品に使われていることです。
七福神 八橋織 長襦袢
七福神は、日本、中国、インドから集まった、まさにワンチームのような七人の福の神です。正月七日迄に参拝すると、七つの災難が除かれ、七つの幸福が授かると言われ、新年を迎えるのにふさわしい文様です。
カード・雪だるま モスリン 子供長着
絵柄のカードの中には冬に遊ぶ子ども達の様子が描かれています。「ねえ、雪が積もったら・・・」「お正月にね・・・」と新調した着物を着せてもらいながらのおしゃべりが聞こえてきそうです。軽くて暖か、モスリンは子どもの着物にも好んで用いられてきました。
麻の葉に宝尽くし 二越縮緬 長着
麻の成長ぶりはいちじるしく早く、手間がかからずとも大きく育つことから麻の葉は模様として好まれます。邪気をはらう力があるとされるため、赤ちゃんの成長と魔除けの意味を込め産着の模様によく用いられます。そして吉祥文様のひとつの宝尽くしを配しています。
雲取りに宝尽くし 平絹 羽裏
雲取文様は形を様々に変えます。生まれては消え消えては生まれる雲や霞は吉祥文様として古代中国から伝えられました。雲取りの中に打出の小槌や金嚢などの宝がつまったおめでたい文様です。
宝尽くし 二越縮緬 羽裏
地模様の宝尽くしは防染糊を型置きして白く染め抜き、金嚢と隠れ笠は摺りぼかし※1 や写し糊※2 で型染めしたものです。紅白の色合いも縁起の良い吉祥文様です。
※1 丸刷毛で染料を摺り込む
※2 糊に染料を練り込んだもの