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四季の展示「武具と薬玉」

五月五日は端午の節句です。
端午の節句に菖蒲やよもぎをつるし邪気を払う風習は平安時代に中国から伝わりました。
この風習から発展し、室内の不浄を払い邪気を避ける為につるしたのが薬玉です。
薬玉は魔除けとされ、種々の薬や麝香じゃこう沈香じんこうを玉にして錦の袋に入れ、菖蒲や蓬の葉を飾りつけ、五色の糸を垂らします。のちにさまざまな造花を飾りつけました。薬玉は文様としても美しいので若い女性や女児の祝い着の文様にも用いられ、縁起よく「久寿玉」の字を当てることもあります。
“健やかに逞しく育て”と願う親心はいずこの国も同じです。
男児の節句飾りのよろいかぶといくさに使う武具のひとつです。このような武具が文様に取り入れられたのは江戸時代になってからで、武家の子供の衣服に使われました。

麝香じゃこう  香料の一種。ジャコウシカからとった黒褐色の粉末で芳香よく、薬として使われる。
沈香じんこう  ジンチョウゲ科の高木より採取する香料。

薬玉と貝桶  平絹 長襦袢

萌黄色のぼかし地に四季花を寄せた薬玉、五色の糸が風にそよぎとても優美です。
平安貴族の遊びから、のちに婚礼調度のひとつにもなった貝合わせと貝桶。それぞれ美しい蒔絵が描かれています。

くす玉(薬玉) 平絹 長襦袢

くす玉は、平安時代から存在し、種々の薬を束ね作られました。
「薬玉」と呼び平安中期には中宮定子により飾られ、『枕草子』にも残されました。薬玉に五色の糸でたらし、延命長寿、無病息災の願いが込められていました。

おどしと菖蒲革 平絹 長着(男児)

よろいさねを綴った縅しは、上方が淡く下方が濃い配色で裾濃縅すそごおどしと呼ばれます。
染め革に簡略化したショウブを並べた菖蒲革文様。菖蒲が勝武、尚武に通じることから武具に多く用いられました。

雲取に薬玉 江戸縮緬 長着

お祝い事のくす玉のみなもとは薬玉。沈香等を入れ花を飾り邪気を防ぐとされました。江戸期には紙で造花を作り女児につけました。秋には菊花に詰め替えたので菊の花も見えますね。

武具 錦紗縮緬 長襦袢

鎧と共に戦さで体を守る武具ですが、時代の移り変わりと共に美術品となりました。美しい縅や弓矢と共に兜の前立てや吹き返しが豪華です。

大鎧の星兜と吹き返し 二越縮緬 長襦袢

武具が文様に取り入れられたのは江戸時代になってから、武家の子供の衣服にのみでした。2020秋冬のパリコレにも甲冑かっちゅうや兜のデザインが使われる等世界に通じる素敵な文様です。

薬玉と遊具 錦紗縮緬 長襦袢

この中で見慣れぬ柄は振々毬杖。さて、どれで、何と読むでしょう?平安時代の子どもの遊びに使われていた物が後世に縁起物として伝わりました。上部の遊具が『ぶりぶりぎっちょう』です。左利きの語源説とも・・

花薬玉に檜扇 錦紗縮緬 長着

みどり色の文様全体に色とりどりで鮮やかな花薬玉と末広がりの雅な檜扇を合わせることで縁起が良く、華やかな吉祥文様です。

太刀飾り 錦紗縮緬 長襦袢

実戦用と異なりつかさやとも金や漆、色など美しく装飾されています。他の一振も白さめ皮の柄で飾り紐も優美で、いま流行の刀剣女子にも人気が出そう!(受けるかも!)

御簾のよろけ縞に薬玉 江戸縮緬 長襦袢

薄く柔らかな江戸縮緬に燃えるような真朱の色を染め、揺れる御簾とし、御簾の帽額(もっこう)の文様に木瓜文。木瓜ぼけはぼけの花ですが瓜の様な実がなるので木瓜。うりつながり!
薬玉の紐も揺れ、風を感じられる長襦袢地です。

薬玉 紋縮緬 長着

人民の健康を祈るという薬師寺の花会式の造り花は梅、桃、桜、牡丹、山吹、藤、杜若かきつばた、百合、菊、椿の十種。さて、この布面いっぱいに描かれている薬玉にはどんな花があるのでしょう。

いざ、出陣! 二越縮緬 羽裏

兜、弓矢、采配などの武具からたんを発し、男の子がたくましく、強い子に成長してほしいという願いが込められた、端午の節句飾りの文化を作り上げました

松皮菱に薬玉 二越縮緬 長着

鮮やかな紫と色で染め分けた背景は、菱の変形で上下に小さな菱をつけた松皮菱です。花薬玉の紐の曲線が美しさを際立てています。
※松皮菱 松の皮をはがした形に似ているので松皮菱という。

兜 二越縮緬 長襦袢

強いものを描くとすれば、兜の前立には獅子、矢を入れるえびらには、とんぼ(勝虫)。地色の濃い青色は褐色かちん(勝色=かちいろ)です。
後方の白い采配が浮かびあがってきます。

薬玉 錦紗縮緬 女児長着

緑色地に大きな薬玉。中国から伝わった魔除けの薬玉は薬や香料を錦の袋に入れ、五色の糸を長く垂らします。中国では菊花は仙花といわれ薬の力を持つ花とされました。華やかな女児の祝儀の文様です。

矢羽根に薬玉 紋綸子 女児長着

弓矢は尚武の象徴です。矢羽根は魔を払う意味や形の面白さから文様に取り入れられています。薬玉との組合わせは七五三の女児祝着にも見られます。

平家物語 モスリン 長襦袢

茶色の濃淡の雲取り文様に兜、弓矢、刀剣。そして楽器の琵琶。
祇園精舎の鐘の声諸行無常の響きあり、琵琶法師の声が聞こえてきそうです。

立涌に薬玉 一越縮緬 長着

黒と青紫色の立涌文様を背景に、梶、蔦、楓など葉を飾った薬玉が明るい色で描かれています。色調のコントラストで薬玉が生き生きと引き立っています。

流鏑馬やぶさめ 平絹 羽裏

武具に花と向鳥の文様を背景に流鏑馬を表す為、弦巻つるまき(弓の掛け替え用に予備の弦を巻いた藤製の輪)綾藺笠あやいがさ(藺草で編みもとどりを入れる為に中央の巾子こじが高い)が配されています。

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