絞り染めの技法
「絞り」
古くから日本に伝わる優れた染色技法には「三纈」と呼ばれる纐纈(絞り)・夾纈(板締め)・臈纈(蝋染)の三方法があります。絞り染めは、縫う・巻く・括る・たたむ・締めるなどの布地に皺や襞を作って防染し模様を染める素朴な染色技法です。この度は多数ある技法の中より一部ではありますが、解説します。
<縫い絞り>
縫い絞りは下絵の輪郭に沿って糸で縫い、その糸を引き締めて柄を染め出す方法で、もっとも基礎的なもので種類も多くあります。
<杢目絞り>
布地を横から平縫いして、布地を締めると、縦に無数の筋ができ染め上がった時、杢目にみえるのでも杢目絞りという。
<紙当て絞り>
図柄の裏面にふのりで和紙を貼りつけ防染し、合わせ縫いと同じに平縫いにする珍しい方法。
<折り縫い絞り>
布地を二つに折り、山の折目に近い部分を平縫いし、引き締める方法。
<合わせ縫い絞り>
平行した二つの山を四枚重ねた状態で平縫いし、引き締める方法。
<唐松絞り>
布地を二つ折りにし、平縫いにして強く締めると染め上がりが唐松のようになる絞り。
<蜘蛛絞り>
下絵の点を鉤針に引っ掛け、傘の布のように縦ひだをつけ根元から上部に巻き引き締める方法で、模様が蜘蛛の巣状になる絞り。
<桶絞り>
桶絞りは、比較的広い面積を染め分けるときに使われる防染技法。桶の内側に防染部分の布地を入れ、染色する部分だけを桶の縁に出し、蓋で強く締めて桶を蜜封して染め分ける方法で、他の手法と併せて用いられる。
<匹田(疋田)三浦>
図柄の粒を布地の下から人差し指で押し上げ、一粒ずつ巻いて左端から右斜め下方向に絞る。形が四角形になるので匹田三浦絞りと名づけられた。
<巻き上げ絞り>
帽子絞り
多色の絞り染色をするための防染技法のひとつ。模様の輪郭を糸入れして引き締め、根寄せによってほうずき状になった部分をビニールで被い、麻糸で引き締め防染したものを帽子絞りという。小帽子絞り、中帽子絞り、大帽子絞りがあり、輪郭の直径が三センチ以上のものは防染に芯を使用する。
巻き上げ絞り
図形の輪郭に平縫いで糸を縫い入れ、引き締めて巻き上げる技法。あらゆる図形を表現できるのが特徴。傘巻き絞りともいわれる。
<一目(人目)絞り>
下絵線に沿って布地を四つ折りにしてできた粒を絹糸で二回巻き締めて括り、糸を切ることなく次の粒を同様に括り、絞り目で線柄を表現する技法。
<鹿の子絞り>
模様が小鹿の斑点に似ていることから名付けられた絞り。手結び鹿の子や簡単な器具を使って絞る方法がある。指先でし(※)け糸という絹の生糸だけで絞り目を一粒ずつ糸で三回から八回括り、小さな粒の集合で模様の面や地を表す。
※しけ糸… 繭から糸を繰る時、初めに出てくるむらのある粗悪な糸。