子どものきものに願いをこめて
近年、少子化が問題とされ、今年4月より子ども家庭庁が発足されました。
昔も現代も子供への愛情は変わりません。この度はきものに込められた親の願いが表された、百徳、背守りを取り上げました。
七つ前は神の子、七つまでは神の内などといって昔の人は、小さく弱い乳幼児が災いや病魔におかされることもなく、七つまで無事に成長したことに安堵したものです。
現在のように医療が充分でない時代は抵抗力のない弱い子どもを育てるうえで細やかな心遣いや親の祈りを身につけるきものに表しました。
背守りもその一つです。ひと巾で仕立てる一つ身には背縫いがないので、魔除けとして、背守りをつけるという習俗がありました。
百徳(ひゃくとく)
「百徳」は子どものきものの一つで、金沢の鬼子母神に奉納された子どもの衣裳があります。日本には古くから「つぎ寄せ」と呼ばれる文化があります。その中で百徳は、生まれた子どもが無事丈夫に育つようにと願いをこめ、長寿のお年寄りのいる家や健康な子どものいる家などから端裂をもらい歩き、それを接ぎ合わせて作ったものです。
地方によって「百継」とか「百はぎ」または「三十三とこあつめ」「百とこあつめ」「千枚衣」ともいわれますが、いずれにせよ生まれた子どもが無事に育つことが大変だった時代、親の思いは今では考えられないほど切実でした。
背守り
ひと幅でできている一ツ身のきものには背縫いがありません。背縫いのないきものには魔よけとして背守りをつけました。子どもが水難などにあった際に、神様が引き上げて助けてくれると信じられてきた習俗です。
また疳の虫押さえと言い、虫のおこらない、おまじないとの言い伝えもあります。
背守りには、初誕生日を無事に迎えられるようにと、糸だけで十二の針目で一年を表したり、様々なデザインや工夫がありました。