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帯締め

帯締めは、文化年間(一八〇四~一八一七)、歌舞伎役者の瀬川路考が創始した路考結びが解けやすいので、その上からしごきで帯の解けるのを止めたとされ、崩れやすい帯結びを固定するために生まれたと言われています。

江戸時代を通じて次第に幅広く長くなっていった帯を固定するため、幕末ごろには一般に普及していました。

明治の終わりごろまでは、丸一ぐけの紐が使われていましたが、その後は組紐が主流となって現在に至っています。なお、帯締めは江戸時代には「帯留」と呼ばれていました。

丸ぐけ——細く縫い合わせた生地の中に綿を入れた紐。

組紐——絹糸などの糸束を斜めに交差させて作る紐。江戸時代までは武具や工芸品などに使われていたが、明治の廃刀令以降は帯留や羽織紐など、装身具としても活用されている。

帯留は、「帯が崩れないよう固定する紐」という意味だったようです。

最近では、紐だけを前で結ぶ時は「帯締め」、結び目を後ろに回し、帯締めの前に付ける飾りものを「帯留」として区別するようです。

なお、帯留をつける時は「三分紐」などの細めの帯締めを使うこともよくあります。

飾りものという意味での帯留が登場したのはやはり幕末ごろからで、刀装具など、男性用の精巧な細工物を女性の帯にも飾ったのが始まりと言われています。

明治になると宝石や蒔絵などぜいたくな素材を使ったものが流行し、現代も小粋なアクセサリーとして愛されています。

美しい着物の要となるのが帯締め、帯揚、半衿などの和装小物、これらの選び方次第で装いの印象が変わります。

 

帯締めは、一年を通して同じものを用いることができますが、戦後開発されたレース組の帯締めの登場で、夏用が一般的に使われるようになりました。

夏に袷用の帯締めを使う場合は、暑苦しく見えない色や太さに気をつけましょう。一本の帯締めを自然になじませるか、アクセントにするかで、雰囲気はがらりと変わります

また、帯締めの格を決めるのは「色」「柄(組み方)」「太さ」です。

きものの格に合わせた帯締めを選ぶことも大切ですが、おしゃれなセンスを表現するのもこの1本にかかっています。取り合わせを楽しみ、きもの通に。

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