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季節と文様

季節と文様

 日本のきものほど、様々な文様を多彩に美しく表した衣裳はありません。春夏秋冬、明確な四季の変化がある日本、いにしえより、様々な工芸品に季節の美が表されてきましたが、衣服の文様にも季節感が取り入れられています。

早春――梅、水仙、椿、牡丹、桜、蕨、蒲公英
初夏――青楓、藤、紫陽花、菖蒲、百合、鉄線
初秋――菊、秋桜、萩
晩秋――吹寄(いろいろな木の葉が風に吹き寄せられた様子を描いた文様で、松葉、柿の葉、松毬、銀杏などを散らします)
初冬から、雪持柳、雪持笹、雪持松、雪持椿しなやかな枝葉が雪の重みに耐える姿をデザインしたもので、やがて雪をはね返して立ち直る弾力を有する植物の生命力と、春を待つ心が伝わる文様です。雪持南天のように季節感がはっきりしたものは、季節に合わせてやや早めから用いますが、文様によっては雪のない季節にも使われることがあります。

季節の先取り
秋草文様、桔梗、萩、女郎花、撫子、薄、葛、藤袴の秋の七草や、竜胆、秋の野に咲く草花を文様化し、夏のきものや帯の柄に用いることで、ひと足早く爽やかな秋を感じることが出来るのです。

季節のうらがえし
雪輪文、美しい雪の結晶の輪部を描いたもので、涼しさを求めて夏に使われることも多い文様です。雪輪の中に文様を入れたり、雪輪を文様の区切りに用いたりもします。

季節問わず
 四季草花文は、四季折々の草花や草木を取り合わせて文様化したものです。趣があって一年を通して着られ、また、青楓と紅葉を一緒に描いたものは、春と秋の両方の季節に用いられます。
 日本人は森羅万象、あらゆるものを意匠化し、文様装飾として使いこなしてきました。文様を知ることによって、染織品に対する知識が養われ、きものを着る楽しさが深まることでしょう。

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